さて、今日と明日はザルツカンマーグートへのミニ旅行である。自分たちですべて手配した
オプショナルツアーというわけだが、何が待ち受けているやら。今度こそアクシデントから解放されるか?!

 列車はウェストバンホーフを8時34分に出発。そこまでは地下鉄を乗り継いでほぼ30分のはずだが
余裕を持ってホテルを1時間ほど前に出ることにする。最寄の地下鉄駅はフリーデンスブルック、土曜ということで
そうでなくてもラッシュのないウィーン、周辺はほとんど人がいない。ホームに下りても人影はまばらだ。電車内も
ご覧のとおり。

 ←この左がすぐ駅の入り口になっている。

 


 乗り換えも順調にいってほどなくウェストバンホーフに到着。2年前の旅行でフルに使った駅で、泊まったホテルもすぐ目の前に
見える。なんだかすごく懐かしい。左が駅、右奥に見える黄色い壁の建物がそのホテル、メルキュール・ウェストバンホーフである。
あのリッチな朝食をもう一度食べたいぞ…。




 ホームに到着した時点でまだ出発まで30分近くあり、余裕しゃくしゃくでしばらくスナップに専念する。車内はまさに
私が抱いていたイメージ通りの「ヨーロッパの列車」!昨日乗ってきたタイプとは違ってちゃんと個室になっている。ふむ、これがかの
コンパートメント。左の写真の入り口上の席番号プレート、黄色い紙が差し込まれているのがおわかりだろうか。これが昨日苦労して
確保した我々の指定席の印である。ここで今から4時間過ごすと思うとなんだかわくわくしてくる。なお、このコンパートメントは
最後まで我々だけで占領することができた。

 

 


 さて、列車は定刻通りに出発、ほどなく田園風景が目の前に広がる。昨日ずっと見続けたチェコの風景とはまた趣が違うのが
興味深い。全体に緑が濃いのは風土の違いとしても、家々がこぎれいな感じがするものが多いのはやはり国民所得の差もあるのだろうか。

 落書きもほとんど見られず、まさに子供の頃親しんだ物語の世界を見るような気がした。なぜかこの季節に菜の花が一面に広がっている
ところがあちこちあってびっくりさせられたが、昨日も見かけた枯れたひまわり畑や葉祥明の絵に出てきそうな教会、そしてとにかく澄んだ
空の青と濃い緑と、列車の窓は2年前と同じく汚れていたけれど、天気がよかったせいか比較的きれいな写真を撮ることができた。ちょっと
多めだけど並べておく。

 

 

 


 列車は走り続け、やがてリンツに到着。リンツといえば私にとってはモーツァルトのシンフォニー36番だ。うちのオケではまだ取り組んで
いないけど。ここがねえ…と駅に停車しただけで感慨しきりである。ガイドブックによればウィーン、グラーツに次ぐオーストリア第3の
都市とのこと、いつかここもゆっくり立ち寄ってみたい。




 そして出発してから約2時間半、アットナング・プッハイムに到着。列車はここでザルツブルグへ向かう車両と
シュタイナッハ・イルドニングへ向かう列車とに分かれる。我々が乗るのはシュタイナッハ・イルドニング方面へ
向かうほうだ。ここからは1時間15分ほどで目的地のハルシュタットに着く。

 切り離し作業があるために予定では8分ほど停車するはずだ。さっそくカメラ片手にホームに降りてみる。左の写真、
「1」と書かれているのが我々が乗ってきた車両である。

 


 ほどなくして目の前で切り離し作業が始まった。これは撮らねばということで、列車に乗り込む。どうやら我々が乗ってきた車両が
先頭になるらしい。右の写真に写っている親子と私、興味津々で作業を見下ろせる先頭に陣取る。ちょうど窓になっていて
まさに特等席で作業が見られるのだ。



 レンズを向けたところ、切り離し作業を終えたおじさんがふっとこちらを見上げた。すかさず「撮ってもいいですか?」の
気持ちをこめてにっこりしたところ、おじさんもにっこり、これでもう大丈夫。

 で、遠ざかる車両を見送った後、今度は我々の列車を牽引する機関車が近づいてきた。近づいて…え?おじさんは
動かない。どんどん近づいてくるのに、まだ動かない。ちょっと!おじさん、横にどいていないと危ないんじゃないの?
あーっ、ほら、もうそこまで…ほら!危ないですよっ!ええっ!!

  

 


 結局おじさんは最後まで連結部にとどまったまま。日本だったら間違いなく横に避難しているだろうし、そういう規則に
なっているだろうと思うのだが。意外とおおらかというか大胆というか何ともはや。おじさんはもちろんまったく動じることなく
淡々と作業を続行、無事終えた。お疲れ様でした。

 


 ところで、一連の作業がやや手間取ったか、列車は定刻より7,8分遅れて出発した。いよいよザルツカンマーグートの懐深く
入ってきたわけである。ザルツカンマーグートは特定の地名ではなくいわば「地域」をさす言葉で、あの「サウンド・オブ・ミュージック」の
舞台といえばイメージがわきやすいかもしれない。オーストリアの湖水地方とでもいおうか、美しい山並みと湖の点在する風景は
「オーストリアの宝石箱」と称えられているという。

 標高が高くなってきたせいか、やや曇って、というよりガスが出てきたようだ。が、確かに緑は一段と深くなり山も目の前に見られるように
なった。時折野生?のりんごがたわわになっているのも見えたが、どうがんばってもカメラでとらえることができない。もうちょっと
ゆっくり走ってくれたらいいのだけど…無理か。右の写真、中央付近にあるのがやはりりんごの樹である。このときはせっかく列車が
一時停車したのに、距離が遠くて撮れなかった(レンズ交換のヒマなし)。

 


 ところが、湖が見えた!と思ったときに急に青空がのぞいて一気に晴れてきた。湖の上にはたくさんの「帆」が舞っている。何という
スポーツか知らないが、あれが人を引っ張って水上スキーでもしているのだろうか。青空と湖と背後にそびえる山、まさにこれぞ
ザルツカンマーグート!とすっかり感激してしまった。これはトラウン湖、地図で確認したところ結構大きい細長い湖だった。

 


 空が晴れてからは緑が一段と美しい。窓越しでなく直接撮れたらなあと思いつつ、シャッターを切り続ける。

 

 
 これはハルシュタットの2駅手前のバート・ゴイゼルンの駅。右の駅舎のすぐ左に居酒屋?の看板が見える(写真左)。そしてその
背後にすぐ迫るようにそびえたつ山、ありふれた風景なのだろうけど、すっきりまとまって美しく調和していることに感心してしまう。

 


 さて、時刻は12時39分、いよいよ目的地のハルシュタットに到着した。駅はシンプルといおうか素朴といおうか、日本の
ローカル線にもこんなところがありそうだ。駅のすぐそばにハルシュタット湖へと下る細い道があり、ハルシュタットの町は
対岸だ。10分ほどの渡し船の「旅」をするわけだが、「世界で一番美しい湖岸の町」といわれるハルシュタットを正面から
見ることのできる貴重な10分間である。

 湖上からの風景は帰りに撮った写真で見ていただくとして、これは駅舎と、乗ってきた列車を湖へと下る道から見上げたところ。
くずれかけた小屋は昔土産物でも売っていたのだろうか、船着場のすぐそばにあった。

 

 


 短い「船旅」はあっというまに終わり、町の船着場に到着した。そういえばこの船、よく見たら結構小さめ…満員で乗れないことって
ないのだろうか。いや、こんな小さな町にそんなに人が殺到することもないのかな。

 


 何はともあれ、まずはホテルにチェックインだ。船着場のすぐそばのはず…とその方角に歩き出すと、あれだ!ほんとに近い、
すぐわかった。HPを見て小さなホテルであることはわかっていたけど、確かにこじんまりした可愛らしい建物だ。教会のすぐ隣、黄色い
壁が目印になっている。

 


 ホテルの名前はグリュナー・バウム、あの予約バトルを思い出すと、よくここまでこぎつけた…と感慨ひとしおだ。設備は古めとの
ことだったが、確かに鍵もご覧のとおりクラシックなものだし(開けるコツを飲み込むまで結構かかった。一度まったく開かなくなり
ボーイさんを呼んだところ、なんと持ってきたのはマスターキーではなく六角レンチの束!ほとんど力ずくで開けてくれたけど
たまげました)全体にアンティークな雰囲気が漂っていて、それがすごくいい感じ。

 部屋は寝室とバスルームの2室に分かれていて、そのバスルームが広いことにまたびっくり。服を脱ぐのがためらわれるほどで、
トイレもこれだとかなりとまどってしまう。お風呂やトイレはある程度「狭さ」がないと落ち着かない、というのは
標準住宅がウサギ小屋の国の住人の発想だろうか。

 

 


 階段は木製でじゅうたんが敷かれており、段差は低めなところが時代を感じさせる。踊り場がまたいい雰囲気だ。




 荷物を部屋に置いてちょっと落ち着くと、いよいよ観光だ。ハルシュタットの大きな観光ポイントは二つ、世界最古の塩坑@現在も
操業中と納骨堂バインハウスだ。ガイドブックによると、狭い土地で墓地が十分確保できなかったこの地では、埋葬してから10〜20年
たったところで遺骨を取り出して次の遺体を埋めるという風習があり、その取り出した遺骨を納めたのがバインハウスだとか。

 だが、どう考えても約1000個の頭蓋骨の山を見たいという気になれなかったので、ここはまっすぐ塩坑へ。小さな町のメインストリート、
ゼー通りを湖に沿って抜けていくと塩坑の上り口にたどり着く。町見物もかねて、さあ、出発だ。

 ホテルの外に出るとまず目の前にあるのがマルクト広場。ここがハルシュタットの町の中心部といっていいだろう。花で彩られて
いる窓がホントに美しい。ウィーンに比べ花が一段と多いような気がする。

 


 ガイドブックによると、中央ヨーロッパから西ヨーロッパに見られる先史時代の一時期に「ハルシュタット時代」があるとのこと。
紀元前1000〜500年頃、ハルシュタットの裏山に眠っていた豊富な岩塩を求めて移住してきたといわれるケルト民族によって
残された文化で、ゼー通りを少し歩くと右側にハルシュタット博物館があった。ここにその文化の名残がいろいろ展示されて
いるのだろうが、ここに寄っていると塩坑に行けなくなってしまうのでそのまま通りを直進する。

 と、水がちょろちょろと出ている水道?に遭遇。いわくありげなのだが、よくわからない。なかなか絵になる水道ではある。




 さらに進んでいくと、一軒の家のドアのところにこんなものが置かれているのを見つけた。ドアは通りに面しており
誰でもすぐ手が届くようなところなのに、何の包装もせずにぽつんとそのまま。私にとっては思いっきりツボだったので
急いで何度もシャッターを切る。飾ってあるのは造花だったけど、なんてすてきなプレゼント!古びたドア、緑のボトル、
白い花に白い封筒の手紙…帰りに通ったときはもうなかった。ここの家の今夜の食卓、さぞ華やぐことだろうな。




 さて、そろそろ道の両脇に土産物屋やレストランなどお店が増えてきた。どのお店もなかなか個性的でいちいちひっかかって
しまう。いわゆる「ハルシュタット土産」としてはやはり岩塩関係が一番多いようだが、ほかにクリスマス飾りらしきものが
よく目に付く。
 なかなかあか抜けた、しゃれた小物が多くてすっかり夢中になってしまったが、今買ったら荷物になるから、と
とりあえずカメラに収めることで我慢する…はずだったが、最後のボトルがいっぱい並んだお店ではついに負けて買って
しまった。これは精製した岩塩をボトルに詰めたもので、ボトルに描かれた絵の美しさに完敗でした。どうせ持つのは
私じゃないしねヾ(-_-;)

 

 

 


 そして、ここはあの予約バトルのときに真っ先にHPを見つけ、実は一番泊まりたかったところ。部屋の装飾がとても個性的だったのだ。
ペンション・ハルベルク、外観もなかなかおもしろかった。まるで盆栽のような鉢植えがずらっと並んでいる。




 いうまでもないが、道の両側すべてが商店やレストランというわけではなく普通の家もたくさん並んでいて、それがまた
すてきなものが本当に多かった。ゼー通りのスナップとして何枚か並べておく。

 

 




 こんなふうにいろいろひっかかりながら歩いたために、たいした距離でもないところを結構時間がかかってしまったが
ようやく塩坑の上り口が見えてきた。矢印の方角に曲がってちょっと歩くと、ケーブルカー乗り場が目の前だ。そして町はずれの
家もまるで絵のように美しくて、どうしてもスナップする手が止まらない私である。

 




 ケーブルカーに乗って山の上に着くと、そこからさらに15分ほどだらだらと山道を登る。レストハウスもあって、塩坑見学は
せずに風景だけ楽しんで帰る人もいるようだ。

 道の途中にはいわくありげな石碑、彼に帰国後調べてもらったところによると、ローマ時代の初期に谷間に墓地?が
あったらしいとのこと。ほかにおそらく岩塩を掘っている途中に出土したと思われる人骨(レプリカ?)の展示もあった。また
聖女バルバラ(ってどんな人?)像も見かけたが、日本ならさしずめお地蔵様か道祖神を祀る感覚だろうか。

(調べたところ、聖女バルバラは3世紀頃の守護聖人と判明。トルコの裕福な家庭に生まれた彼女はふとしたことから当時
弾圧を受けていたキリスト教を知り、熱心な信者となる。結局16歳の若さで殉教することになるが、数々の拷問や恐怖を
神の奇跡により克服して殉教したことから、危険にさらされる仕事に対して御利益があるとされ、炭坑夫や消防士、砲兵、
火薬庫など、火や火薬、燃料に関わる職業の守護対象であるとのこと。
 したがってここでは岩塩を掘り出す坑夫たちの守り神として祀られたのだろう。)

 




 ようやく塩坑ツアー出発点に到着。ここでまず自分の服の上から作業服を着てよぶんな荷物は預ける。カメラはそのまま
OKだった。室内は簡単な塩坑の説明のための展示があって、ここでしばらく待機する。皆お互いの作業服姿を撮りあったり
して楽しそうだ。若い中国人カップルに頼まれて、私もシャッターを押してあげた。新婚旅行かな?初々しい雰囲気がほほえ
ましい。

 で、それじゃあと私もそのカップルにエクシを渡してシャッターを押してもらおうとしたら、彼は「いいよ〜」とめんどくさそう。
ったく、25年もたつとこうだもんね。いいから撮ってもらうの!と強引に彼を引っ張ってレンズの前に立たせる。あちらは
そうでなくても彼が盛んに彼女をレンズで追っかけてるというのに、当方はエクシを持たせているのだが頼まないと撮って
くれない。ま、私もあまり撮ってないけど。 結局ここで撮ってもらったのが今回2人だけで写っている唯一のカットとなった。




 やがてツアー開始時間となり、塩坑の入り口に案内された。入り口からまっすぐ伸びたレール、そうか、ここから
トロッコ列車に乗って中に入るのね…と思ったら、ガイドさんいわく「歩いて入ります」。皆思わず笑い出し、ガイドさんの
後をくっついていく。中はさすがに暗くて、なかなかシャッターを押すことができない。歩いていくトンネルの両側には
塩の結晶がいっぱいくっついていておもしろかったのだけど。




 歩く距離は結構長かった。途中には昔の掘削用工具の展示やマネキンを使った掘削風景の再現コーナー、
また映像と光を用いた展示などちょうど万博のパビリオンにでも入り込んだような気分だ。展示は一箇所に
集中してあるのではなく、少しずつ移動しながら見学、説明を聞くようになっている。

 説明はドイツ語と英語で行われ、もちろん我々は英語のときに前に出ていくようにしていたが
パネルや模型も使ってくれたので比較的理解しやすかった(ところもあった)。 このあたりは太古の昔は
海で、地殻変動により海水がいわば水たまり状態で取り残され、干上がって出来た塩の塊が今度は地中深く
沈んでいって押し固められ、岩塩となったのだという。こういう「歴史の現場」で聞く説明はなかなか興味深く
おもしろかった。日本語で聞けたらもっと楽しめただろうけど。

 ところで、途中2箇所の「滑り台」があったのには驚いた。ここを滑らないと前には進めないのである。ここで
やっと作業服のわけがわかった。こういうものでも着ていないと、途中でひっかかったりして怪我をする可能性が
あるしスカートの女性なんて到底無理だ。上から見ると結構勾配も急に見えるのだが、しり込みしている人は
1人もおらず、皆遊園地に来たように楽しそうに順番を待っている。

 写真はその「滑り台」のてっぺんから撮ったもので、モニターで前の人がいなくなったのを確認してから
青ランプがともり、ガイドさんに促されて次の人が滑っていくようになっている。




 ところで、写真を撮ってたら、あれ?どこかで見たことある人が滑っていくよ?えっ、ちょっと待ってよ!
なんと、後ろで待っててくれてるとばかり思ってた彼が、とっとと先に滑っていくではないか。

 このとき日本人は我々だけ、後は例の若い中国人カップルとインド人とおぼしきちょっとそれより年かさのご夫婦が
いた他はほとんどが欧米系。あちらの方々はカップルの場合必ず男性が女性を守るように後ろについて、2人一緒に
滑っていく。相当年配のカップルも皆そうだ。
 そして私はこの急勾配?がちょっと怖かった。一緒に滑ってくれるとばかり思ってたのに!これだから日本の男は
アカンねん!(ちなみにオーストリアではとにかくレディファーストが当然、それも老若男女が混じっていたら、若い女性より
年配の男性のほうが「下位」になるそうだ。したがって年配者を優先させる日本女性は「優しい」ということになるらしい)

 とにかく怖かろうがなんだろうがこうなったら1人で滑るしかないので覚悟を決め、カメラはストラップを斜めがけにして
体に密着させ、台にまたがる。ヘタに足先でブレーキをかけると危ないだろうという気はしたので、ももで台を締め付ける
ようにしてスピードを落とし、かろうじて滑り終えた。滑ってしまえばそれなりにおもしろかったが、気分は最悪。

 もういいもんね。ずっと離れて行動します。滑り終えたところにまた大きめの展示コーナーがあり、説明を聞いて
まわったのだが、マジでむくれた私はわざと彼のそばには行かず、さっさと1人で聞きやすそうな場所に陣取る。写真は
岩塩のかたまりで作った明かりと、岩塩を壁に展示したもの。何せ暗いので、手持ちではこういうところしか撮れない。

 


 なお、この滑り台はもう一箇所、もう少し長いのがあった。いいもんね、もう1人で平気だもんね。今度は私がとっとと先に
滑ったが、最後のほうで思わぬスピードが出て一瞬緊張してしまった。で、ちょっと離れたところで人だかりができているので
何だろうと思ったら、なんとカメラが滑り台の途中に仕掛けてあって、そこを通り過ぎた瞬間滑っている映像とともにそのときの
スピードが表示されるのだ。皆そのモニターを見ていたという次第。
 グループで来ていた人たちはお互いのスピードを比べあって大変な盛り上がりよう。どうみても80歳前後と思われる
おばあさんが無事滑り終えたときも拍手が起きた。

 そして滑り終えたこの場所におもしろいものがあった。暗がりに水をたたえた地底湖だ。あいにくこの地底湖についての
説明はよくわからなかったが、ここはライティングがすごく幻想的で、ちょうど湖のまわりに柵があったのでそこにカメラを
固定して何枚も撮ってみたところなかなかいい雰囲気のものが撮れた。まさにこんな感じで、湖の向こう側の岩壁を
スクリーンにして塩坑の歴史をアニメ?で映し出してくれたのもわかりやすくておもしろかった。

 ちょっとわかりにくいと思うが、中央に張り出している岩のすぐ下が水面で、天井のライトに照らし出された岩が水面に
映り込んでいるという状況で、右のほうに湖面に下りる「はしご」があることから大きさを推定されたし。撮影データはシャッター
スピード1.3秒、F2.8、EV-0.3、ISO1000 by E-500 & ZD14-54mm。




 さて、見どころ満載だった塩坑ツアーも終わりに近づいた。さらに現在の岩塩の掘り出し作業風景やその用具の一部の
展示などを見た後、今度こそトロッコ列車に乗って外に出ることになった。トロッコ列車といっても、要は細長い「ベンチ」が
連なっているだけ。つかまるところもろくにないシンプルさだが、今度はやっと彼も私のそばにやってきて一緒に「ベンチ」に
またがる。

 今までどれくらいの時間塩坑の中にいたか、どのくらいの距離を中で歩いたかはよくわからなかったが、このトロッコ列車に
乗っていた時間も結構長く感じた。周りの壁がすぐそばに迫っているような狭い中をずいぶん走っていたような気がする。
暗くはないもののさすがに写真を撮るゆとりはなかったが、外が見えてきた時点で、ここがもう最後だからとシャッターを
切った。右の写真がそのトロッコ列車である。

 


 待ち時間を含め1時間半ほどの塩坑ツアーはこれですべて終了した。着ていた作業服を返すところにお土産コーナーがあり、先ほど
2本目の滑り台を滑ったときの写真がずらっと並んでいたのにはびっくり。ひきつった顔で写っているかと思ったら、意外や2人とも
笑顔だった。スピードは私が13.8km/h、彼が17.0km/h、「Salzwelten Hallstatt」の文字と日付も入っている。

 1枚5ユーロで2人だと10ユーロ=1500円ほどだが、他の人たちみたいに2人で滑ってたら1枚ですんだのに…「まさか買わないよね?」
との彼の言葉になおさらむかっときて2枚とも購入した。いいじゃん、記念なんだから!
 ちなみに印画紙は富士フイルムの「Fujicolor Crystal Archive Paper Supreme」でした。

 さいぜんからのむかっ腹が収まらない私は、帰り道もとっとと1人で先に立った。時刻はすでに4時半近く、だいぶ日も傾いて
きたようだが、相変わらず雲ひとつない空が美しい。
 
 右の写真はケーブルカー乗り場のすぐそばにある案内図で、一番左下にある小さな黒い点はケーブルカーのイラスト、また
わかりにくいと思うが上のほうのオレンジ色のマークが塩坑ツアーの受付、実際の塩坑の入り口はさらにその左上である。
それにしても本当に見ごたえのあるところで、ここに来られてよかったと思った。

 


 ケーブルカーはすぐ乗ることができた。出発までのわずかな時間に下界を見下ろして撮ったのがこれで、
ハルシュタットの中心部からはちょっとはずれた家並みである。こちらまで足を延ばすゆとりはなかった。




 ふもとに到着すると、傾きかけた日に照らされた家々がまたホントに美しくて、再びスナップモードに入る。ある家のそばに
置かれた古いベンチがなんともいえない雰囲気だ。おばあさんが猫を抱いて座っていたりしたらさぞかし絵になるだろうなあ。
窓からちらりと見えるびんや窓際につるされたほおずきがすごくいい感じなのだが、いくらなんでもよそ様の庭にずかずか
踏み込んだり窓からのぞいたりするわけにはいかない。残念無念。

 


 再び先ほど通ってきたゼー通りを歩いて帰路につく。にぎわっていたカフェもそろそろ店じまいのしたく中、人通りもぐっと少なくなった。
先ほど通り過ぎただけのお店をスナップしてみたり、お土産も今度こそしっかり買い込んだ。明日は日曜、オーストリアでは商店も
お休みになることが多いのである。
 
 なお、右下の写真のボトル、ビネガーかオイルかピクルスかわからず不思議に思っていたのだが、つい先日、東急ハンズに
同じようなものがあったので聞いてみたところ、単なる装飾用で食べられないものと判明。ボトルに詰められていた野菜や
フルーツの種類と組み合わせがどうも食用にしては?な感じだったので、やっと納得できた。

 




 そしてホテル前のマルクト広場に到着。先ほどはちらっと見ただけで通り過ぎた広場、よく見るとさっきは気がつかなかった
ものが目に付いた。かわいいホーローのカップに飾ってあるのはリンドウとエーデルワイスの花。エーデルワイスは白い小さな
花というイメージを持っている人が多いと思うが、実際はにこ毛に包まれたこんなユニークな形をしている。「可憐」かどうかは
意見の分かれるところかも。

 


 これはホテルの湖に面したデッキから撮ったもの。ハルシュタット湖は夏はダイビングを楽しむ人でにぎわうとのこと。デッキからは
直接湖に出られるようになっていた。のぞきこむと水はとてもきれいだ。山々の雪解け水が流れ込んでいるんだろうな。

 山に囲まれている湖はすでに薄暗くなっているけれど、山の頂上付近にはまだまだ日が当たっている。その対比が本当に美しくて
いつまでも眺めていたかったが、だんだん肌寒くなってきたので室内に引き上げた。なお、歩いているうちにだんだん気分もほぐれて
きたので、いつのまにやら「一方的冷戦」は雲散霧消である。一方的っていうのも何だかね。




 さて、夕食だが、今からよそに食べに行くのも面倒…ということで、結局ホテルのレストランに行くことにした。考えて
みれば、これが初めてのまともな現地でのディナーだ。2年前の旅行では昼食を含め一度もまともなオーストリア料理を
食べなかったし、プラハでの夕食はなんとお寿司、昨日のコンサート前はインペリアルホテルに行ったものの軽食を
とっただけだ。

 ハルシュタットの名物料理といえば、なんといってもその湖で獲れたマスのソテーだとか。ボリュームたっぷりの
肉料理は苦手な私はこれしかない。ネットで検索したときも賞賛の声を多々聞いていたので、私は迷わずこれ。一方
彼は豚ヒレ肉のゴルゴンゾーラソース添えを頼み、さらに私はサラダ(メニューを見ながら量の確認をするのに苦労した)、
彼はガーリック風味のクリームスープ、そして白ワイン。

 


 これは最高に楽しめたディナーとなった。サラダのドレッシングもおいしかったしクリームスープも美味、そして何より
マスのソテーのおいしかったこと! 運ばれてきたときはその大きさに一瞬ぎょっとしたが、バターでかりかりに焼かれた
皮の香ばしさ、そして白身の魚のくせのない味、本当に申し分なかった。添えられたポテトはちょっと多すぎて残して
しまったけれど、マスは完食。横から味見した彼は「うまいけどしょうゆがあったらもっとおいしい」などと言ってたが、
私は大満足。なお、写真でソテーに添えられているのはレモンであってグレープフルーツではありません。これも
大きくてびっくりさせられた。

 一方、彼が頼んだ料理のほうは、ソースは申し分なかったけどお肉が若干ぱさついていたらしい。私はゴルゴン
ゾーラ味にイマイチ食指が動かなかったので味見せず。

 


 さて、これにて本日の予定はすべて終了。明日の朝食は8時からだそうで都市のホテルとはずいぶん勝手が違う。で、
ホテルの玄関が開くのは7時ということなので、7時から早朝散歩に出かけることにした。このこじんまりした町が朝は
どんな表情を見せてくれるか、とても楽しみだ。ということで、皆様、おやすみなさい…。



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