「ヴィオラの出物があるそうですよ。見に行かれるなら紹介します」という、6月末に届いたわがオケの長老からのメール、
これがすべての始まりとなった。
 
 あれよあれよというまに結局手元に迎え入れることになったその楽器の故郷はイタリアのクレモナ。ちょうど今年は
夫のリタイア記念とて久しぶりに海外旅行先を検討中だったのだが、それなら、いっそクレモナ、イタリアに行くか!と
話はとんとん拍子に進み、かつフェイスブックも顔負けのアマチュア音楽家ネットワークが見事につながって、わが新しき
パートナーの製作者とも会う手はずが整い、9月14日にイタリア・ミラノへ向けて旅立つこととなった。

 さて、その9月14日。今までは大手旅行社の飛行機・ホテルのみ決まっているパックツアーを利用していたのだが、
今回はまったくの個人旅行となった。あれこれ検討した結果、足はお安くホテルはそこそこに、というコンセプトで選んだ
のはフィンランド航空とイタリアはスターホテルズ・アンダーソン。そして行き帰りともヘルシンキで乗り継ぎとなるのだが
帰りは到着翌日の出発となり、ヘルシンキでも1泊せざるを得ないために、ここでは空港直結のヒルトンホテルを
チョイス。 さて、どうなるかはすべて行ってからのお楽しみ〜と、ともあれ一応元気に出発の日を迎えた。

 6年前とまず変わったのが成田空港までの足。最初はフツーに新宿から成田エクスプレスに乗るつもりだったのだが、
なんと我が家の最寄りの中央線の駅(のみならず、いろいろあります)から直通の成田エクスプレスに乗れ、しかも
半額近い割引となる「N'EXクーポン」なるものがあるという。最初ネットでチケットを普通に予約、引き取りに行ったその場で
そのクーポンの存在を知り、即それに切り替えることに。めっちゃ得した気分、 当日朝も、こんなにすぐ成田エクスプレスに
乗れるとは!と大感激。最初の画像は、その成田エクスプレスの車内での1枚である。




 成田へは予定通り着いたが、乗るはずの飛行機は30分以上の遅れが発生中。のんびり諸手続きを
終えて、私はさっそく久しぶりの空港スナップに精を出す。今回のお供はE-M5、2004年にウィーンに
連れていったE-1から数えるといったい何代目になるのやら。 あのときは50-200mmのレンズまで
持っていったために本当に重かった。比較にならないほどの軽い装備で、はるかに
快適に思い通りの写真が撮れるのだから、本当に技術の進歩というものはたいしたものだ、と
今更ながらの感慨にひたりつつ。 って、こんな写真ですけど。

  一番上が乗る予定の飛行機。




 そろそろ搭乗開始だ。最近はますます搭乗時の荷物チェックが厳しくなっているとかで
歯磨きチューブだの化粧品だのうがい薬だの気を使って荷造りしたが、幸い何もひっかかることなく無事機上の人となる。
ヘルシンキまでは約10時間の旅で、現地との時差は−6時間、さらにそこからミラノまでは約3時間、
こちらの時差は−7時間である。直行便より時間はかかるが、気分転換になって悪くないかも…という
予想はあたることとなった。

 さて、もはや飛行機への恐怖感はまったくなくなった(2004年ウィーン旅行記を参照されたし)私、課題は
いかにこの長い空での時間を快適に過ごすかということのみ(普通はそうですね)。 そういえば、2004年に
乗ったオーストリア航空は、こういう座席の背中にモニターが付くタイプじゃなかったっけ。機内中央に大きな
スクリーンが設置されたタイプの航空機はもう過去のものなのかな。自分で好みのチャンネルを自由に楽しめると
いうのは本当にありがたいことである。

 そしてこちらがフィン・エアーのアテンダントさん、金髪色白のまさに北欧美人! 美しい人は同性が見てもやっぱり
いいものです。彼女、後でサンダーバード(古)みたいなキャップ?をかぶっていたのだが、それが抜群に似合って
かっこよかった。あの姿を撮りたかったなあ…オヤジか私。

 


 ほどなくして1回目の機内食登場。焼きそばとポテトのニョッキから選ぶのだが、もちろん二人で
それぞれ別なものをチョイス。が、なんと日本そばが添えられてる?! そういえば2006年のスイス・エアラインでも
行きにおそばが出てきたっけ。 だからおそばは帰りに出してほしいと…しかも焼きそばに日本そばを添えるこの
センスって。 まあ、焼きそばそのものはおいしかったですけど。
 おまけにお茶だけじゃつまらないと白ワインなんぞ頼むものだから、何とも珍妙な取り合わせ、ニョッキに赤ワインと
した彼のほうがその点まだ正解だったが、肝心のニョッキの味はイマイチだった。
 

 


 映画を見たり音楽を聞いたりしながら過ごすが、だんだん尾てい骨が痛くなってきた。
隣の席が空いているのを幸い、椅子の上に横座りしてみるとちょっといい感じ。これって
おばあさんが椅子の上に正座しているのと同じかしらね…いいのよ、楽なら何でも。
 (正座すればもっと尾てい骨は楽だったと思うが、座席の上に思い切り頭が突き出そうな
気がしたのでやめておいた。ちなみに普段は正座は苦手)

 映画は噂の?「テルマエ・ロマエ」がメニューにあり、さっそく観たのだが、なぜか音声がときどき
途切れたり、また途中で居眠りしてしまってストーリーが見えなくなってしまったりで
イマイチ。 音楽はライプツィヒ・カルテット+Barbara Buntrock(って初めて聞いた)のベートーヴェンの
Op.4と29のクインテットがなかなかいい演奏で楽しめた。ちょっと楽譜を探してみたいかも。

 アーティストは演奏者名を書くべきかと。


 さて、時間は過ぎて2回目の機内食タイム、現地時間では昼食にあたるといえばいいのだろうか。
このチャーハンはおいしかった。飛行機の位置はこのあたり、まだまだシベリア大陸上空だが、今回
私たちの席は中央だったので、窓からの風景を見ることはできなかった。

 


 そしていよいよフィンランド・ヴァンター空港到着。ここでは約2時間半の待ち時間でいよいよ
ミラノへと向かうことになる。荷物はそのままスルーで届くので、まずはイミグレだ。なお、フィンランドはイタリアと同じユーロ圏になるので
イミグレはここで受けてイタリア入国時は不要になる。何もやましいことはなくても、にこりともしない係官にパスポートを差し出すのはかなり緊張する
作業だが、私の前にいた日本人の女の子2人連れがかなり長い時間ひっかかっていたのでなおさらだった。 
 
 私の番が来て、係官「○×■?」 はい? 「何日滞在するのか?」 えーと、ミラノは5泊だけどヘルシンキは1泊で、これは6日と答えるべきか?? 
一瞬迷ったけれど早く答えなければ怪しまれるかも…面倒だ、「5 days !」 「OK.」  なんだ、ただの世間話だったのね。 
彼はいきなり「ハンコ?」と聞かれて面食らってたが「カンコー(観光)?」と言われたのだと気づいて、苦笑しながら「Yes!」と答えていた。 旅は
始まったばかり、まだ英会話には慣れない。(旅が佳境に入ってもしゃべれる内容はたかが知れてますが…特に私)

 さて、いよいよ乗り継ぎゲートを目指す。右の画像は帰りに1泊するヒルトンホテル、ホントに目の前だ〜ひと安心。何せ帰りにここに
着くのはほとんど深夜なので。

  


 後は出発の時間になるのを待つばかりなので、安心してスナップに精を出す。あら、可愛いゴミ箱! お酒のびんって
ホントにきれいなものが多いよね〜ジャムのびんも。きれいなびんがずらっと並んでいるのを見ると、ついついレンズを
向けたくなる。そしてさっき機内で出されたチョコレート、なぜか「Geisya」という名前だったがその箱があった。 
謎の命名は、おそらく日本人も人のことを言えないのだろうとは思うが。

  

  


 この日のヴァンター空港はかなり混雑していた。帰りもここを通るんだなーと思いながら、今度は人も入れて撮ってみる。

 

  




 これが今からミラノ行きが出る30番ゲート。撮り出すと止まらなくなる私、タイムキーパー役の彼に促されてようやくこちらへ。まだ後30分は
あったんだけどな。ということで、ここでもしつこくスナップ。

 


 さて、搭乗開始。さっき乗ってきた飛行機よりはだいぶ小さめな感じ。操縦席が見えたので思わずレンズを向けた。思っていたよりは
小さいような…いろいろあるんですね、M元機長!(←うちのオケのVc弾き)

 


 今度は窓際の席に座れた。が、座席の背中にモニターはなく、ご覧のように天井から小さなものが間隔をあけてぶらさがっている。
それはいいのだが、あいにく私の席からは角度が悪くて自分の頭上のモニターは見えず、その一つ向こうのは遠すぎて
画面がよくわからない。
 ここで持っていった14-150mmのレンズが大活躍、カメラのレンズ越しなら何不自由なく自分の見やすい大きさで情報が
得られる。いや〜このレンズ買ってよかった! 広角から望遠まで1本で済むというのは、ホントに旅行ではありがたい。
描写にも文句はまったくないし、これに20mmF1.7の可愛いパンケーキがあれば何も不自由はない(こちらは今回室内ブツ撮り
専用)。 他に実は45mmF1.8も持っていったのだが、結局出番はなかった・・・一つエピソードを生んでくれた他は(それは
この翌日のことだった)。

 そうやって得た情報はこちら、ヘルシンキ〜ミラノの地理的位置はこんな感じである。このときは飛び立って2時間弱ほど
過ぎたところ、ポーランド上空か。




 そして飛び立ってもうすぐ3時間になるという頃、ふと気づいたら眼下に広がるのは…うわ〜〜〜、すごい!すごい!
これがアルプス?! 連なる山並みにうっすら積もった雪、場所によってはなだらかな吹きだまり(と言っていいのかどうか)に
なっている。 大地が何か大きな手で手繰られ畳まれた跡のようで、見ていると地球創成期の光景が
浮かんでくるような気がした。飛行機の位置はご覧のとおり。

  




 さて、そろそろ到着の時間。飛行機がどんどん高度を下げ始め、ミラノまであと9分という表示が出た。やっと着いた…
我々の体内時計は深夜だ。着いたというテンションで元気になるほどもう若くもないし、何より今回は送迎サービスは
一切頼んでいないので、着いたらすぐバスか列車を探さねばならない。初めて訪れるラテン圏ということで(言いたいことは
おわかりかと)、実はかなり行く前から緊張している部分もあったのである。 ほら、パッチワークのような農村風景が
見えてきた、今から何が待っているだろう? がんばれ私!

 
 

 何より不安だったのはロストバゲッジだが、これは問題なくすぐ自分のキャリーに出会えた。まずは第一関門クリア。
で、イミグレ…は、なくていいのね? 荷物を受け取って人の流れのままに進んだら、すぐ外に出てしまったことに
2人とも拍子抜けしてしまった。ホントに出てしまっていいのか? このとき、ユーロ圏の「シェンゲン協定」(=ユーロ圏内なら
いったん「入国」した後は国内旅行同様自由に行き来できる)についてすっぽ抜けてた我々、いやいやいくらイタリアでもイミグレを
勝手にすり抜けられるほどアバウトではないだろう、という結論に達し、かまわず出ることにする。

 (ちなみに荷物の受け取りに何もチェックはなく、荷物に貼られたラベルと渡された控えのバーコードの照合など
 一切ないままだった。やっぱりイタリア…と思ったのだが、帰国時の成田も同様だった。いいのだろうか?)

 ともあれ、行こう! 結局、わかりやすいというバスをめざす。渋滞がありませんように。市内までは約50分のはずだ。

 


 バスに乗りこんだら、なんだか車内が暗い。窓ガラスが色つきでほとんど外の光が入ってこないのだ。さらに車内照明もなし。乗った直後は
まだしも、だんだん薄暗くなってきた後はホントに「まっくら」と言ってもいいような状態になる。街中でもネオンなどが少ないため
すっかり日が暮れてからの道はちょっと心細かった。終点で降りればいいとわかっていたからまだよかったが、下車が途中の停留所だと
きっともっと緊張したことだろう。 




 そして、ミラノ中央駅に午後8時過ぎに無事到着。すでにあたりは真っ暗、日本時間で言えば15日の午前3時くらい。この
ミラノ中央駅は交通の拠点としてかなり大きいもので、国際列車も発着しており、地下鉄もある。それだけにいろんな人が集まってきて
特に夜はあまり治安がよろしくないとか。 駅に着いた旅行客の荷物を勝手に運んで手間賃をせしめる輩もいると聞いたので、
あたりに気を配りながらさっさとバスからキャリーを下ろすと、自分たちの位置を確認。本当に目の前にスターホテルズ・アンダーソンが
あったので、一目散にそちらをめざす。

 チェックインして自分の部屋にたどりついたところで初めてどっと気がゆるんだ。はぁ〜着いた!着いた!よかった! 部屋は
情報どおり本当にきれいで、過去にホテルの部屋写真を撮り忘れていた私、荷物を解く前に急いでシャッターを押す。

 

 


 トイレとビデの間にあるシャワー、どう考えても使ったら洗面所じゅうが水浸しになってしまう。いったい
どんなシチュエーションで使われるのか、最後までわからなかったが、部屋については本当に快適で
申し分なかった。
 過去の旅行では、着いたらすぐホテル周辺を散歩して、だいたいの様子を確認していたが、もはやそういう元気は残って
おらず…あまり夜出歩かないほうがいいというのもあったけど、やっぱり我々も年を取ったか。
 明日、第一日目の観光はミラノ市内から1時間半ほど列車に乗り、コモ湖を訪れることになっている。イタリアの湖水地方と
言われるその地域はお金持ちの別荘も建ち並んでいるとか、オーストリアの湖水地方、ザルツカンマーグートで過ごした時間を
再び味わうことができるのだろうか。

 ともあれ、無事着いたことに感謝しつつ、本日はこれにて。



15日へ

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