18日。ついにウィーン滞在最終日を迎えた。

JTBのお迎えが10時40分ごろとのこと。この日もちゃんと6時に起きてしっかり朝食を取ったが、この
すばらしいメニューと今日限りでお別れというのが何とも名残惜しい。ついに全種類制覇はかなわなかった。

部屋に戻って7時過ぎ、さて荷物の整理か…と思っていたら、ダンナが「のみの市やってるよ」と言い出す。
こののみの市は毎週土曜のみ開かれるというものだが、えっ、6時半からやってるの?!
場所はナッシュマルクトのすぐそばなので、地下鉄に乗れば10分ちょっとで行ける。あの市場も天気の
いいときにもう一度行ってみたかったところだし、昨日買ったお土産でちょっと買い足したくなったものもある。
のみの市・ナッシュマルクトに2時間近くいられて、しかもお土産も買って、10時半には戻ってこられるぞ!
これは行かねば!そそくさと身支度、さらに荷造りも終えて8時半には現地到着。

天気もピーカンの晴れ、さらにのみの市が開かれるせいか、先日よりはだいぶ人が多いナッシュマルクトである。
先日も興奮したけど、本当に野菜・果物の種類が多く、さらに先日は気づかなかったお店、のぞくことができなかった
お店も多々あって、あらためてその色彩に夢中になる。




野菜の陳列の仕方も日本では考えられないような方法だったりするのがまたおもしろくて仕方がない。
こんなふうにブドウを積み上げたら、下の方がつぶれないんだろうか?
また、八百屋の店先にはなぜか「HOKKAIDO」と書かれたかぼちゃの山。「INLAND」とあるので国産(つまりオーストリア産)
だろう。そういう名前がついた品種なんだろうか。



また、白菜・もやし・豆腐があったのにびっくり。アジア系の人向けなのか、それともこちらの人にもこういうものが浸透しつつ
あるのか?白菜を置いてあったのは1軒だけだったけど、もやしと豆腐は結構あちこちで見かけた。鍋がウィーンでできるぞ。
また、野菜を刻んでミックスしたものがあったのも目を引いた。
日本でもスーパーなどでこういう類を見ないわけではないけど、パックもしてないし大丈夫かなあ?
どうやらこのままスープの実などにするらしい。
下の写真のラストはいちいち「へぇー!」「ねー、見て見て、あんなのがある!」と叫びつつ写真を撮りまくる私である。






最初は八百屋・果物屋が目に付いたが、だんだんチーズの店・パン屋・魚屋など他の店も増えてきてまたまた夢中に。
始めはもちろん被写体として夢中になったわけだが、だんだん主婦モードになってきて、あ、あれおいしそう! あれ安いじゃん!
でもどーやって持って帰るのよ…というわけで、次回はぜひポリ袋と密閉容器を多数持参しようと固く決意した
私である。土のついたもの、肉関係でなければ検疫も大丈夫そうだし。








さて、ナッシュマルクトを抜けると、今度はそこはのみの市の会場である。
なるほど、これがね。日本でも最近フリーマーケットが盛んになってるし、骨董市だのボロ市だのあってこういう光景は珍しくないが
品物の山を見ているとわくわくしてくる。
本格的なアンティークを扱っている店と単に「不用品」を持ってきただけの人に大別されるそうだが、いや、それにしても何といろいろな
品物があることか。






スナップしながらぶらぶら歩いていったが、結構店が多く端にたどりつくまでかなり歩いた気がする。
ここが最後のお店だなーと思ってふと見たら…おお、ヴァイオリンが!!



わあー、こんなところで売ってるんだ!と思ってまず撮ってから眺めていたら、店のおじさんが何やら説明を
始め、適当に相槌を打ってたら、売り台の下から別の楽器を取り出してきた。
ほーと思って弾いてもいいかと尋ねたら、「あんたが弾くのか?」と聞かれ、そうだと答えたらやおら弓を別のところから
取り出してきた。これは明らかに安物で、張っても張ってもなんかぶわぶわした感じが取れない。
糸巻きが固くてチューニングにも手間取ったが、音を出してみると結構いい感じ。へぇー!

するとおじさん、またまた売り台の下から別の楽器を取り出す。今度は裏板に美しく彫刻がほどこされたものだ。
わぁ、すてき!オーストリアの工房で作ったそうな。材料はイタリアからだと言ったかな、いや、違ったかな。
あご当てがついていないので、構えるのが大変だったが、これがなんともいい音を出す。ちょっと、これ、いい!!
弦はドミナント(私も使っているナイロン弦)だったと思うが、屋外でこれだけ鳴るとは、もしかして掘り出し物?

もう一つ、さらに出された今度はイタリア製とかいう楽器も試した(写真)が、こちらはなるほどクリアなより明るい音が出る。
だが、気に入ったのは前のオーストリア製の方だ。「傍鳴り型」(近くで聴くとよく鳴るが、離れると響かない)かもしれないし、
他の弦楽器奏者のアドバイスもないまま楽器を買う、しかものみの市で!というのはあまりに無謀だし…と、あきらめる理由を
考えてたら、おじさんが何やら楽器の値段を言ったようだ。
「500ユーロだって。60万以上だよ」とダンナ。えー、そりゃ無理だわ。これで決まった。
だけど、あれ?60万円?



頭のどこかに?を抱えながら、おじさんにお礼を言って楽器を返し、時間もなくなってきたので次の予定の買い物のために
市の中心部の方へ向かう。
で、歩きながらよくよく考えてみると…ちょっと、違うよ!60万じゃなくて6万でしょ!いや、7万かな、とにかく一ケタ違う!
1ユーロ=このとき約135〜140円だから、だいたい6万円から7万円の間になる。えー!!
(彼は「いや、疲れて寝不足で頭がボケてて…」としきりに言い訳してた)

実際にあれだけいい音がするのだ。中に貼ってあったラベルに「17○○年」とあったのはウソだと思うが(あのラベルは後で
いくらでも貼りなおせるのだ)、実際に音の出るインテリアと思えばそんなに高くない、いや、安い!
手持ちのユーロはもちろんそんなになかったけれど、ホテルに戻って円を足せばその程度はあると彼は言う。
だが時間がない!とてもお金を取りに帰ってなどいられない。
それに、こんなふうに楽器を衝動買いしていいのか!?という思いもどこかにないわけでもない。いや、これは出会いなのか?
あああーー!!

とにかく時間がない、という現実のもとに楽器を買うのはあきらめざるを得なかったが、逃がした魚は大きいとはこのことか。
あのおじさん、品が確かかどうかは別として明らかにプロの売り手だった。きっとあののみの市にはよく店を出しているに
違いない。今度行くことがあったらぜひ! あのメルクで見たカルテットの壁飾りとともに、こののみの市での
ヴァイオリンが私のリベンジの対象である。また出会えるかどうかわからないけど。

ヴァイオリンに思いを残しつつ、お土産を少し買い足してからホテルに戻り、最後の荷造りを終えたらもう10時半。
約束の45分きっかりにガイド女史がホテルのロビーに現れ、我々は5日間を過ごしたホテルを後にした。

空港ではガイド女史から最後の注意事項をしっかりと賜って別れる。慣れないうちは、こうやって細かく説明を聞くことが
できるのはやはりありがたい。早く涼しい顔で個人旅行ができるレベルに達したいものだが…たぶん無理だろうな。
成田行きの便が30分ほど遅れているとのことなので、思いがけず時間にゆとりができた。空港内をうろうろし、
手持ちの小銭整理をかねてさらに小さなお土産をいくつか購入、再びスナップに精を出す。





ところで、どういうわけかウィーン市内ではランジェリーショップをよく見かけた。雑貨を置かない女性用下着だけの専門店だ。
どうしてそんなに下着だけの需要があるんだろうか?と疑問しきりだったが、空港内にもご覧のとおり。ウィンドウや店先をちらっと
見ただけなので詳しいことはわからないが、日本のように「寄せて、あげて…」とか「アウターにひびかない」など機能性を
ウリにしたものはあまりなかったようだ。必要ないってことね。ふん。そういえばマネキンのバストも心なしか日本よりグラマー
だった気がする。

また、アメリカではスーパーで売っていたケーキが極彩色だったことに度肝を抜かれたが、ここにもこんなドーナツが!
ただ、ウィーン市内ではここまで派手な色は見なかった。カフェのケーキも日本のそれと同じような感覚のデコレーションだったし。
下左の写真は搭乗口のすぐそばにあったカフェ、その名も「ヨハン・シュトラウス」。右はその搭乗口で、我々の乗る飛行機はA7からの
出発である。成田への直行便(オーストリア航空)ということでさすがに日本人が多かった。

さて、結局40分ほど遅れて出発。ガイド女史の奮闘のおかげで、満席にもかかわらずちゃんと2人並んで窓際の席に座ることが
できた。今度は私が通路側に座る。
行きと同じようにしばらくして食事が出てきた。和食と洋食とどちらか好きなほうを選べるのだが、和食といっても
シチュー添えピラフみたいなのになぜかパン、かろうじてかっぱ巻きが「和」と言える程度である。
だけど、おお、揚げだし豆腐(写真左上)だ!ちょっと冷えてるみたいだけど、まあしょうがないか。あれ、だしがないよ?
何かけて食べるんだろう?



彼は「後からだしを配るんじゃないか?」と言ってたが、その気配なし。仕方ないね、きっとこのおしょうゆ(パンの向こう側に注目)で
我慢しなさいってことでしょ、と思って盛大にかけたのだが…。
一口食べてがーーーん!!!これ、揚げだし豆腐じゃない、お菓子だ!リンゴのケーキ!!
ひえええーーー!!!

しかしである。最初はショックだったけれど、食べてみたら意外とイケました。考えてみれば砂糖醤油味のおせんべいだってある。
醤油と砂糖は相性がもともと悪いわけではないのである。バター醤油味のポテトチップだってあるんだし。
ただ、周りに対してあまりにカッコ悪かったので、そそくさと食べ終えた。誰かに気づかれたかどうかは定かではない。

ところで、行きはずーっと外が明るいままだったが、帰りは延々と暗闇を飛ぶ時間があり、これはかなり長く感じた。
映画も見始めたアニメがなぜか途中で切れてしまい、別の映画が始まったりして不調、極めつけは私の座席の背もたれで、
後ろに倒しても倒してもいつのまにか戻ってしまうのである。おかげでほとんど寝られずじまい。
彼は5,6時間は寝てたというのに。

行きと同様、さほど揺れもせずに無事到着。ウィーンを出るときの遅れは取り戻したばかりかさらに早くなったようで、
正味11時間足らずで着いた。日本到着午前9時20分、我々の体内時計は午後4時20分。
飛行機を一歩出たとたん暑さにげんなりしたが、ああ、無事帰ってこられた…とやはりしみじみうれしかった。

こうして我々の11年ぶりの海外旅行、2年早い銀婚記念旅行は終わった。終わってみるとなんだかウィーンとの距離が
短く感じられて、すぐにでも行けるような気がするのが不思議だ。
ムジークフェラインの会員証は来年6月まで有効!だし、またぜひ行きたい。今度は違う季節のスナップを、いや、見損ねた
あれを、これを…と、早くも次への夢を描いている私である。


さて、読んでくださった皆様、長々とおつきあいくださって本当にありがとうございました。
旅行記に入りきらなかった「こぼれ話」を別項にまとめるつもりでおりますので、よろしかったら
またまたご覧ください。



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