さて、ミラノに着いて4日目、今日も市内観光の続きである。着いた翌日から朝は健康的に早起き、6時半の朝食にちゃんと
間に合うよう起きられているが、窓の外はまだ暗い。で、何気なく下界を見下ろしたところ…ん?いつもと違う風景。



 道路の一角に山積みのゴミ、そうか、今日はゴミの収集日なのね。イタリアのゴミ収集ってどうやるんだろう?
興味津々で眺めていると、あ、来た来た!あれがゴミ収集車か。



 見ていると、ゴミ収集車の後ろにゴミ容器をひっかけるフックがあるようで、そこにひっかけられた容器がぐーっと機械で持ち上げられ、
上がりきったところでくるりと回転して、ゴミを収集車の中へとぶちまける仕組みになっているようだ。白いベストを着たおじさんが
手際良く次々と容器をセッティングしている。朝早くからご苦労様です!

 早朝からまじめに仕事をしている人を見ると、何だかテンションが上がる。いえ、こちらは遊び一辺倒の観光客なんですが、
まじめに観光してこよう(?)。 まずは食事、食事、変わり映えのしないメニュー(選択)だが、本日は一番おいしかったプラムの
写真など。右の桃は残念ながら缶詰だ。そして本日のお茶はカモミールのハーブティーである。

 


 ホテルを出て、昨日はクレモナ行きのチケットを買っただけだったので、列車のホームの様子も確認しておこうとまずそちらへ
向かう。 すごいな〜全部でいくつ線があるのだろう。映画などで目にしてきた、まさにヨーロッパの駅。ちょっとセピア色で
撮ってみたい雰囲気だ。

 




 これが全列車の発着時刻表示板だろう。うん、これを見れば何番ホームから発車かわかるのね。よし。




 それではと、地下鉄乗り場へと向かう。ミラノ中央駅は、列車が発着するのが2階、中2階が店舗、昨日訪れた切符売り場が1階という
構造で、さらに「半地下」を経て地下鉄がある、という構造になっている。右下の写真のエスカレーターを降りた先が地下鉄ホームだ。

 


 地下鉄のチケットは自動券売機、窓口のほかにタバッキ(たばこ屋)などでも売っている。お菓子や新聞を売っている「売店」が
公共交通機関のチケットも売っている、という事実が最初どうもピンとこなくて、つい切符売り場の窓口を目で探してしまった。一人で行動してたら
きっといちいち駅で手間取っていたことだろう。 で、これがそのタバッキだが、レンズを向けた瞬間お兄さんが飛び出してきて
いい感じに入ってくれた。結果オーライ。




 本日の最初の目標はスフォルツァ城、ミラノ中央駅から5つ目のカドルナ駅で下車する。時間にして15分ほどだ。着いてまず
目に入ったのがこの巨大なオブジェ、結び切りの水引みたい…




 スフォルツァ城は、ルネサンスの時代にミラノを治めたヴィスコンティ家とスフォルッツァ家の居城兼城塞とのこと。ルネサンスの
時代というのだから、かれこれ500年以上は経っているわけか。その間にどのくらい修復作業がなされたかはわからないが、あちこちの
朽ち方がなんともいい味を出していて、まさに「つはものどもが夢の跡」といった趣、私にはかなりツボである。よって、ちょっと多めに写真を並べて
おく。ホントはもっとじっくり撮りたかったんだけど。

  

  


 昔は練兵場だったというお城の中庭は入場無料。入っていくと、あらら、あちこち修復中か。そして巨大なスクリーンと観客席も設置され、野外撮影会が
行われているらしい。ちょっと艶消しだけどしかたないか。

 


 これは修復中?あるいは昔の姿を再現して見せたもの? 壁に開けられた穴は、今ではハトの格好の住宅、または休憩どころとなっている。

    


 これは博物館の入り口。お城の内部をそのまま生かした造りになっているのだろう。いい感じなので写真を撮っていたら、
背後から猫ちゃん登場。逃げる様子はないが、こっちに近付いてくれることもない。あっさり素通りして
折から出勤してきた博物館職員?の女性のほうに行ってしまった。普段からえさでももらっているのかな。

    

  ペットの犬は連れ込み禁止、猫たちにはくつろぎの空間だ。


 博物館には入らず、お城の中庭をぶらぶらお散歩していたら、日本人団体客の一団がどやどやとやってきた。ガイドさんが声を張り上げて
ひと通りお城の説明をしていたが、「では、今から一番にぎやかな中心部へとご案内します!」と、あっというまに去っていった。時間にして
10分、いや5分もいただろうか。あわただしいなあ・・・きっとバスで我々が昨日行ったガッレリアまで行くんだろうな。

 地下鉄を使わないしガイドさんがついているから、こわい思いをすることもないんだろうけど、このあわただしさは私には無理、だって
写真撮ってるヒマがないから。見てまわれるところははるかに少なくなるけど、やっぱりマイペースがいい。

 こわい思いといえば、ここの広場にもミサンガ売り(押し売り)が約1名、ぶらぶらしていて一瞬緊張したが、我々のほうには
来ることもなく、その団体客のほうに近づいていったように見えたが特に売りつけようとする様子もなく、そのまま去っていった。
他人事ながらひと安心。そしてこれぞイタリアファッションの見本?のようなすてきなお姉さんが通りかかったのですかさずカシャリと。

 風にひるがえる大胆な色遣いのワンピースが素敵♪ お城の中庭は地元の人の通り抜けコースになっているらしい。

   

 
 さて、のんびりと30分ほどかけてお城見物を終えた我々は、今度はお城の裏手にあるセンピオーネ公園へと向かう。
ここはかつて領主の森だったそうで、47haもある広大なものだ。

 まず目に付いたのはごみ袋をあさるカラス?、羽の色がグレーと黒のツートンカラーでびっくり。公園自体は
かなり掃除も行き届いてきれいで、ジョギングや散歩中の人が何人も目に付いた。やはり緑の多い空間は気持ちいい。

   

    大きな松ぼっくりにびっくり!


 しばらく散策を楽しんでから、今度は彼がガイドブックで見つけたサン・シンプリチャーノ教会に立ち寄ってみることにした。センピオーネ公園からは
ほんの徒歩数分、4世紀に建てられた古い教会だという。歩いて行くと、迷うことなくすぐそれは見つかった。周辺に観光客はおろか人影もあまり
見えない、ちょっと奥まったところだ。

  


 重々しい木の扉をそっと押して入ってみると、人影はまったく見当たらない。ガイドブックによれば、内部に描かれた「聖母マリアの戴冠」という絵が
必見だそうだが、それ目指して観光客が押し寄せる、という雰囲気は皆無だ。我々が中に居たのは結局20分ほどだったけど、合間に2,3人だっただろうか、
そっと入ってきて頭を垂れてしばらく祈り、十字を切って再びそっと出て行く姿が見られた。

 当たり前のことだが、教会というのはそもそも信仰の場である。ドゥオーモのような「観光名所」を見ていると、ついそのことを忘れがちだが、こうやって
地元の信心深い人たちがそっと祈りをささげに訪れる、本来の姿を目の当たりにすると、何だか身の引き締まるような思いがした。

 そして、祈りに訪れる人たちの邪魔をしないよう、中の雰囲気をこわさないよう、足音にも気を使いながら、それでも何枚かはそっとシャッターを押させて
いただいた。ちなみに、私の興味を惹いたのは「聖母マリアの戴冠」よりこちらの燭台である。

   


 マリア様の絵は、祭壇の一番奥、天井に描かれている。右の写真は祭壇のほうから入口へ向いて撮ったもの。

   祈りを捧げに入ってきた人がまたひとり。
  

 さて、今度はどこへ行く? とりあえず、次はミラノに来たらここでしょ!というサンタ・マリア・テッレ・グラツィエ教会を目指してみることにする。
かの有名なレオナルド・ダヴィンチ「最後の晩餐」があるというところだ。あらかじめ申し込んでないと見られないらしいのだが、
情報によれば予約なしでもすっと入れることがあるのだとか。絶対見なくちゃ!というほどの思い入れはなかったので、まあ行ってみるか、
程度のノリでぶらぶらと。相変わらずゆる〜い街歩きである。

 と、何、あの色彩? きゃー、私の大好きな八百屋さん! そのうえなんてファッショナブルなマダムなの! いっぺんに私は
スイッチオン、テンション急上昇で近づいていく。 すぐさまお店の前に陣取ってシャッターを押したいところだが、待て待て・・・
まず手前の花からね。

  


 八百屋にミラノで出会ったのは、これが最初で最後だった。こちらの八百屋さんってどうしてこうフォトジェニックなんだろう。
品物をやたらポリ袋で包んでいないから? いや、やっぱり陳列の仕方がおしゃれかな、実際に買って帰れたらどんなに
楽しいことだろう。いろいろ料理もしてみたいものだ。

   


 名残惜しかったけれど、ここにいつまでも貼りついているわけにもいかない。さあ、行かなくちゃ・・・この後、ぶらぶらと通りを歩きながら
撮ったスナップを何枚か並べておく。通り沿いはいずれも大きな建物が並んでいたが、その中でこういう中庭に通じるおしゃれな鉄の扉が
あちこちで目に付いた。扉の中はもうプライベートゾーンなのだろう、入ってみるわけにはいかないが、ちらりと見える緑やドア、建物の
デザインが本当に素敵だった。オフィス?住宅?どんな人が中で暮らしているのだろう。

   


  


 時間はこのとき10時半〜11時だったろうか。カフェがにぎわうのはこれからだ。人通りもまだあまり多くない。

   


   


 これはアイスクリーム売りのワゴンかな。これからご出勤らしい。

  


 毎度おなじみの落書きは、ポストにも容赦ない。その下は、ワンコのトイレになっちゃっているのかな。街は特段荒れているという
印象は受けなかったけれど、きれいとも言い難い感じだった。だが、歴史を経た建物の美しさ、調和を保っている街の美しさは
そんなことではゆるがない。したがって、歩きながら私はとにかくシャッターを押し続ける。

  


 こちらは緑が美しくからまっている建物、こういうのを見るとレンズを向けずにはいられない。右の写真の緑の正体はなんとフジの花、
イタリア語でフジはなんというのだろう。

  


 さあ、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に着いた。左の写真は教会横の修道院の裏口、表に回るとちょうど礼拝が終わった?いや
社会科見学かな、子供たちが中から出てくるのに出会った。

  


 こちらは修道院から表の教会へと移動しているときに目に付いた表示。これなら迷いませんな。

 


 で、絵はどこ? 教会の内部ではなく先ほどの修道院の中にあるそうだが、あいにくこの日は公開日ではなかった。必見と聞いては
いたが、もともとこの絵自体に2人ともさほどの執着はなかったのであっさり方向転換、近くにあるサンタンブロージョ聖堂をめざすことに
する。

 サンタンブロージョ聖堂は、ガイドブックによるとミラノの守護聖人である大司教アンブロージョを祀る最古の聖堂で、386年に
アンブロージョ自身によって建てられたというから驚きだ。386年といえば日本はまだ古墳時代、聖徳太子も生まれていないわけか、
うーん。もちろん386年当時の建物がそのまま残っているわけではなく、9〜11世紀に再建されたものではあるが、それにしても
すごい。壁を見ると、かつての様子がなんとなくわかるように修復されている。全体には簡素というか、あのドゥオーモの華やかさとは
対照的な雰囲気だが、かえって祈りの場にふさわしい荘厳さをより強く感じた。

  

 
 こちらはどうみても「棺」でしょう。聖職者が眠っているのか、それとも・・・? ドアに施されたすばらしい彫刻は、今はガラスで
保護されている。映り込みを利用して、ついでに自分撮り、さらに他の観光客のかたがたもカシャリと。

    

   うん、多重露光みたい。


 扉をそっと押して中に入ると、先ほどのサン・シンプリチャーノ教会と似て、飾り気は少ないものの荘厳な雰囲気が満ちている。
左の画像は書籍などを置いた売店、祭壇の上の絵の控えめな色遣いが美しい。

 中央の祭壇がきらきらと黄金色に輝いているが、これは宝石・七宝・浮き彫り彫刻がほどこされた有名なものだったらしい。
後で知ったのだが、このときはさほど興味も惹かれず終わってしまった。ちょっともったいなかったかな。

   


 ろうそくの光の数だけ捧げられた願いは神のみぞ知る。ゆっくりゆっくり歩く自分の足音だけが響く中、そっとレンズを向けたのがこちら。黄金祭壇よりも
この淡い光に浮かび上がる十字架と鳥の彫刻のほうが私にはおもしろかった。

   


 時間が止まっていたような教会を出ると、夢からさめたような気分だ。再びスナップしながら、昨日も訪れた街の中心、ガレリアをめざす。そろそろ昼食が
気になる時間だ。ここから30分ほど歩いて、無事ドゥオーモが見える場所に出た。なんだかんだ言っても、やっぱりこの建物は美しい。

   このキリンさんはベルの役目なのかな。


 ガレリアにずらりと並んだカフェのどこに入るかさんざん迷った挙句、特に理由もなく(要するに疲れて)とあるお店に腰を落ち着ける。私はきのこの
リゾット、彼は魚介のパスタで、コースなんぞ到底胃袋が受け付けないのは今日も変わらないが、ビールだけは欠かさない。料理のお味は申し分ないが、
ちょっとお高めだったかな。

   


 実は帰国後しばらくして、たまたまNHKのBS「世界ふれあい街歩き」のミラノ特集を見て知ったのだが、ガレリアには、その上に立ってかかとでくるっと回ると
幸せが訪れる(ミラノを再訪できる)と言われている牡牛のモザイク画があるとか。私が行ったときにはそれにはまったく気付かず、モザイクの上で
回転を試みている(らしい)人も見かけなかった。

 その牡牛のモザイクはガレリアの中央にあるとのことだが、私が見たときに中央にあったのがこれ。いったいその牛さんはどこにあったのだろう?今頃
抱えた謎である。それはともかく、この美しいモザイクはそういうジンクスとは関係なく記念写真の格好のスポットであり、我が家もしっかり撮影してきたが、
こちらへのアップは手のみということでお許しを。このジェラート、すぐそばの有名カフェのものだが、超甘かった・・・

  あ、シワが(^_^;)

 そして下の左の写真はガレリア入り口に張られていたハト除けのネット。ハトはここでも嫌われものらしい。そして、
自分のベビーカーを押す坊やの姿があまりに可愛くて、思わずカシャリと。

  

 
 さて、本日の最終目標は私の大好きなスーパーマーケット。「ミラネーゼが毎日の買い出しに足を運ぶ食品店。イタリア料理に使う
日本では珍しい調味料がきっと見つかるはず」(byガイドブック)となれば、行くっきゃないでしょ!

 ドゥオーモからは地下鉄で3駅目、ポルタ・ベネツィア駅から徒歩5分・・・のはずがなぜか迷ってしまい、うろつくことしばし。ようやく
たどりついたそのスーパー、エッセルンガはしかしちょっと期待外れだった。ポリ袋で包まれた野菜、パック詰めされた肉や魚が並ぶ光景は
フォトジェニックとはおよそ言い難く・・・いや、写真を撮りに行ったのではないのだけど、照明のせい?あるいは並べ方がどうにもそっけない
感じだから?無意識にあのウィーンのナッシュマルクトみたいな雰囲気を想像してしまっていたのだろうか。

 イタリアンな調味料も、なんだかテンションが下がってしまった後は、手に取ってあれこれ検討してみようという気も起きず、
結局早々に引き上げることとなった。いや、決してエッセルンガが悪いのではない。一日歩き回った疲れもあったのだろう。

  




 そして、表に出て歩いていたら、「Centrale」(ミラノ中央駅)と行き先表示のあるトラム(市電)に出くわした。我々は地下鉄の
1日券を買っていたのだが、彼がこれはトラムも共通で乗れるものだ、という。乗り換えたりする必要もなく、まっすぐ目的地に着くのだから
楽なのは間違いないが、いったいどうやって乗るのかは予習していなかった。地下鉄は自動改札で日本と同じだが、トラムの
停留所にチケットを通すような機械は見当たらない。じゃあ乗ってから中で通すんだね、と乗りこんだところ、あれ、機械はどこ?
周囲を見回しても、誰も何もしていない(ように見える)。

 いや、別に不正しているわけじゃなし、検札に来たら切符を見せればいいんだし、と、もう気にしないことにして、後は
窓からのんびり外の景色を楽しむ。このトラムはまだ新しいようで、とてもきれいだ。ゆるゆる走る市電の旅、なかなか
快適である。下りるのは終点とわかっているので、バスのときのように目的の停留所チェックに神経をとがらせる
必要もない。

 


 短いトラムの旅はあっというまに終り、乗客はぞろぞろと下りていく。結局最後まで切符をチェックされる機会も機械もなかった。

 これにて、本日の予定はすべて終了、すでに何度か買い物をしておなじみになっていたミラノ中央駅の地下のスーパーに
寄って夕食の買い物をし、ホテルの部屋に引き上げる。ここはホントに便利で、最終日はお土産の大半もここで購入した(これが
大正解で、空港のお店では同じような品が3割くらい高く、してやったりとほくそえんだものである)。

 


 そしてこれが本日の我々の夕食。サラダ、ポテトチップ、これだけは欠かさないビール、つくづく経済的な我々の胃袋ではある。このときの
ビールの瓶と空き缶が、ホテル備え付けのミニバーのものと誤解されたらしく(この銘柄は入ってなかったのに)、チェックアウトのときに加算されて
しまったのは失敗だったが。




 明日はいよいよ今回の旅の一番の目的、クレモナ訪問である。案内をしてくれるYさんとも無事連絡がつき、列車のチケットも
購入済みだし、何も心配はいらない・・・はずだ。 明日をひたすら楽しみに・・・おやすみなさい。



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